住宅特集 初出コメント


「集合住宅」「撮影スタジオ」「カフェ」「ジム」「書店」etc..
10ヶ月近い施工期間中、それから竣工後も、通り掛かりの人たちからこの建物の用途についてよく質問されました。これらはその一例です。私たちにとって初めての住宅建築はどうやら、必ずしも「住宅」とは見てもらえなかったようです。それは実は正解で、私たちも「住宅」という用途の実現のためにこの建築を設計したという意識はありません。もちろん住まうために必要な機能は十分満たしていますが、前もって「住宅」と約束されていては何か息苦しい。
実現したかったのは上記のように、人々の「使い方」を喚起するようなある種の「質」です。住んでみたくなるような「場」を生み出す力を持った「質」。それはたぶんランドスケープのような存在なのなのだと意識しています。建築に人が入り関わり合いを持った瞬間、その用途が定まるような建築。これからの長い設計人生、そんな建築を実現し続けて行きたいと思っています。


「住宅特集」 2006年8月/新建築社