XXXX / 焼津の陶芸小屋


ライバルは自動車である。
クライアントの趣味である陶芸製作のアトリエ兼ギャラリー建設のための予算として提示されたのは、彼がビジネス用に購入する予定だったトヨタカローラ1台分の予算=150万円。
建築予算としてみれば、無きに等しい金額ではあるが、単に物品を購入する金額であると考えれば大金である。少なくとも、エアコン、カーナビ、パワーウィンドウ付きの豪華な「動く個室」が手に入るだけのチカラを持った「お金」だ。この事実に比較して現在、建築は果たして正しく効率良くその品質のために「お金」を使えているのだろうか。高度に専門分化され発展を続けてきた社会制度上の建築システムは、今でもオブジェとして美しく合理的な建築を生み出しているのだろうか。
そんな疑問を常々持っていた我々にとって、このプロジェクトはその金額の少なさ故に大変魅力的なものになった。
不透明で分かりにくい「建築のお金」を徹底的に把握しなおし「費用対効果で自動車を上回ること」。
建築を一旦オブジェのレベルにまで引き降ろし「オブジェとして最も合理的でリーズナブルなあり方を求めること」。
そんなことを考えて「150万円の自動車に負けない、150万円の建築を作る」を合い言葉に計画はスタートした。


「SD-Review」 2003年12月/鹿島出版